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反省

反省

 


①ご両親を縁として、今のあなたがあります。

 


お父さんがいなければ、あなたは今ここに居ることはありませんでした。

 


お母さんが居なければ、あなたは生まれることはありませんでした。

 


あなたの肉体は、ご両親によって与えられました。

 

 

 

 


②今、あなたがお母さんのお腹の胎内(なか)にいる自分を想像してみてください。お母さんのお腹の胎内(なか)は暖かです。ゆったりしています。何の不安もありません。

 

 

 

そのようにして十月十日(とつきとおか)の間、あなたはお母さんの体に守られて、ゆっくり育っていきました。

 

 

 

お母さんは大変でした。ある時はつわりで吐きそうになり、何日も苦しみました。体は重くなり、動くのさえ大儀になってきました。トイレに行くのも苦しいほどです。

 

 

 

 


③やがて出産の時が来ました。お母さんの陣痛は大変なものでした。

骨の節々まで痛み、身体中から脂汗を流しながら痛みに耐えたのでした。

 

 

 

 


④お父さんもそうでした。出産が近づくともう欲は言わない、ただ赤ん坊の手足の指が五本づつ揃っていれば、母と子が無事であれば、もうそれ以上何もいりませんと、ひたすら祈り続けました。

 

 

 

ひたすら祈りながら産室の前を歩き回ったものでした。それがあなたのお父さんの姿でした。

 

 

 

 


⑤こうしてあなたはこの世に生まれました。「おぎゃー」と呱々の声を上げた時も、両親の喜びはどんなに大きかったか。

 

 

 

その声を聞いて母親は自分までが、初めてこの世に生まれたように喜びました。お父さんもまた、安堵の胸を撫で下ろし、涙さえ浮かべたのでした。

そして手を取り合って二人で喜び合ったものでした。

 

 

 

 


⑥それからは一切がお母さんの手によって育ちました。

母の懐を寝床として、母のひざを遊び場として、母のお乳が唯一の食べ物として育ててくれました。

 

 

 

母の手でなければ夜も昼も明け暮れません。母の手がなければおむつはそのままです。夜中にむづかり、泣き出して母親を起こします。

 

 

 

 


⑦お母さんは台所で水仕事をしていても、あるいはちょっとした買い物に出かけていても、気がかりでならないのです。

泣き声が聞こえてくると、縁側からからでも落ちたのではないかと息せき切って走ってかけつけました。

 

 

 

 

 

 

⑧それがたとえ、空泣きであっても急いで抱き上げておっぱいを含ませました。痛いほど乳房を噛まれても、母は吾が子があどけなくおっぱいを吸い、

にっこり笑う笑顔を身さえすれば、母親は一切の苦しみを忘れるのです。

 

 

 

 


⑨父親が注意していなければ、ストーブの火が身体を焼くことを知りません。母親がいなければ、刃物が指を切ることを知らないのです。

 

 

 

両親がいなければ、毒で命を落とすことも知らず、何でも飲み込んでしまうのです。

 

 

 

 


⑩両親がよその家にお客に招かれておいしいご馳走がでたときに、ああこのお菓子の一つでもあなたに食べさせてあげたいなぁと思うので、多少格好が悪くても、わざと食べ残したものを紙に包んで持って返ったこともあり、あなたはそれを喜んで食べた。

 

 

 

 


⑪あなたが成長するにつれ、しだいに大きな洋服がいります。靴がいります。あなたのお父さんが、汗水たらして働いて得た収入があってこそ、必要なものが整えられていったのです。

 

 

 

限られた収入の中からやりくり算段して母親は、子供たちに必要なものを買い与えていたのです。自分は流行りの着物を着なくても、あるいは、化粧品は、百円の安いクリームで我慢して、あなたに恥ずかしくない服装を用意したのです。

 

 

 

 


⑫そうした大きな愛を受けながら一人前になってしまうと、両親をなおざりにしがちになるのが人間です。まして結婚しますと両親の事を忘れてしまい、自分の家庭だけが心の関心事になってしまうのです。

 


両親と言うものは、歳を取り仕事が衰えてくると頼りにするのは子供だけです。ですから、電話を掛けたり手紙を出してあげれば、両親が喜ぶことは、あなたは百も承知のはずです。

 

 

 

それでいて、滅多に電話も掛けなければ、葉書一枚書くのもおっくうがって、一日延ばしにしてしまうのはどう言うことでしょう。

 

 

 

 


⑬そうした両親が連れ合いに先立たれると淋しさは一段とつのります。

丁度、独りぼっちで旅先の旅館で泊まっているようなものです。話し合える人もなく、淋しさをまぎらわせる物は何もありません。

 

 

 

独りぼっちの親も、頼みとする子供夫婦が、そして、孫が訪れる事もありません。皆と笑いささめく楽しみもなく、夜は冷たい布団の中で身を横たえるのです。眠れない布団の中で思う事は、子供達と一緒に暮らした昔のことです。

 

 

 

 


⑭今は年老いてしわだらけのお母さんの顔は、あなたを産み落とした頃は、

花のように美しい顔でした。

 

 

 

あなたを育てていく苦労が深いしわを、その顔に一本一本と刻み、

顔・かたちはすっかり消沈してしまったのです。

 

 

 

 

 

 

⑮じっ~と、あなたの心を見つめてください。

今、あなたがたの心の中に父母に対する本当の思いがあるはずです。

 

 

 

さあ、その心を持ってあなた方は、ご両親に感謝し、感謝する思いをご両親に愛の行為を返していって下さい。おいしい物があったら持って帰って

「お父さん、お母さん、これおいしいよ」とすすめて下さい。

 

 

 

どんなに喜ばれる事でしょう。その時また、愛の言葉が返ってくるでしょう。「私はいいよ。孫にあげようよ」そのご両親の心をしっかりと胸に刻み込んで下さい。ご両親が病気になったら、あなたが自分で看病しましょう。

 

 

 

 

 

 

 


⑯たまにちょっとした事があって、遠慮がちにお母さんがあなたに何か言えば、「そんな事じゃお母さん困るよ」と文句を言ったのは、あなたではないでしょうか。

 

 

 

いつも妻の肩を持って、「お母さんはそれだから」「お父さんはそれだから」、と逆に両親を責める事はなかったでしょうか。

 

 

 

そのようなあなたであれば、あなたの奥さんやご主人、あるいは子供達も、

あなたのご両親に対して心よからぬ感情を持つでしょう。

 

 

 

 

 

 

 


⑰ひどい時には「人間老いぼれて行き永らえるよりは、早く死んだ方がいいよ」と、鬼のような言葉を吐く人もいます。

 

 

 

そのような言葉を聞いた時に父母の悲しみはどれほどのものでしょうか。

お腹を痛め、ひたすら育ててきた子に、裏切られる親の悲しみはどんなものでしょうか。

 

 

 

それ程の言葉でなくとも、それに類した親の心を刺す言葉を、あなたは口にした事はないでしょうか。両親にこんな思いを抱かせる人があったならば、

もはやその人の心は地獄の心、畜生の心、餓鬼の心です。

 

 

 

如何なる守護霊、指導霊も手をつけかねて、見守る以外ありません。

 

 

 

 

 

 

 


⑱中には頑(かたく)なな心を持ったお父さん、お母さんがいらっしゃるかも知れません。

しかしそれは、長い苦しい人生の間に、あなた方を育てる苦しみのために、

止むなく作り出した心の癖でもあるでしょう。

 

 

 

そうしたご両親でも、あなたの愛の行為の積み重ねによってご両親の内なる心は、広く人間性に目覚めてゆくでしょう。

ご両親がそのように成られた時、本当の親孝行が成就されるでしょう。